こんな時どうする?

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【第23回】

  • 交通

    交通事故労働者の使用者に対する賠償責任

    会社の車で事故を起こしたら、誰が修理費を払うの?


Q 会社勤めの息子が会社の車で自損事故を起こしてしまったのですが、会社から車の修理費全額を賠償するように言われています。でも、息子はわざとやったわけじゃないし、会社のための仕事中に起こしてしまったものです。それでも、息子は修理費を賠償しなければならないでしょうか?

息子さんの行為は不法行為に当たりますから、会社に対して損害賠償責任を負います。ただし、一般的に労働者は会社に比べて資力に乏しく、そんな労働者が会社に生じた損害を全額賠償しなければならないとなると、労働者に酷な結果になるという配慮から、裁判例では、労働者の損害賠償責任が制限されています。具体的には、労働者に重大な過失まで認められない事例では、様々な事情を考慮して会社による賠償請求が棄却されたりしており、労働者に重大な過失が認められる事例でも、労働者が負う賠償責任が二分の一や四分の一程度に制限されています。背任などの悪質な不正行為で会社に損害を生じさせれば、労働者の賠償責任は制限されませんが、交通事故で会社に損害を生じさせたような場合には、労働者の賠償責任は一定程度に制限されることが多いと言えるでしょう。なので、あとはいろいろな事情を考慮しないといけませんが、息子さんとしては、全額賠償までする必要はないと思われます。

Q 会社側は、息子を雇う際に契約書を取り交わしていて、その中に「労働者が会社に損害を生じさせた場合、全額賠償する」という規定があるので、息子に対して全額賠償するよう求めています。こういう契約、約束がある以上、やっぱり息子としては全額賠償しなければなりませんか?

労働基準法第一六条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。お話の出た契約は、この労基法の規定に反して無効になると思われます。

Q 「賠償に応じないなら解雇だ」、と言われてしまいませんか?

労働契約法第一六条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。もし、息子さんが修理費全額を賠償しないことを理由に、会社が息子さんを解雇したとしても、その解雇は無効になると思われます。

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