【第9回】
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後遺障害慰謝料
交通事故に遭い、後遺障害(14級)が残りました。慰謝料の金額はどのようにして決まるものなのでしょうか?
交通事故により負傷して、頚椎捻挫(むち打ち症)で6か月間、通院治療を続けましたが、後遺障害(14級)が残りました。相手方の保険会社から賠償金額の提案書が送られてきて、その中に「傷害慰謝料」とか「後遺症慰謝料」という項目があるのですが、慰謝料の金額は、どのようにして算定されるものなのでしょうか? |
慰謝料とは、事故により負傷したこと(傷害慰謝料)や、後遺障害を残したこと(後遺症慰謝料)による精神的苦痛に対して賠償されるものです。精神的苦痛の程度は、物の量や値段とは異なり、本来、量るに量れないものでしょうが、金銭賠償の原則(民法第417条)の下では、何らかの基準を用いて金銭評価する必要があります。
裁判実務において「傷害慰謝料」は、入通院期間に応じて慰謝料の金額が定められた算定表に、原則として、治療に要した入通院期間を当てはめて算定します。6か月間通院の慰謝料は116万円が基準とされます。もっとも、通院が長期にわたり、かつ、不規則である(通院日数が少ない)場合には、実際に通院した日数の3.5倍程度の日数を慰謝料算定のための通院期間とみなして算定されます。
傷害の部位、程度によっては、算定表の基準額を増減(1~3割程度)することもあります。むち打ち症(自覚症状)で他覚的所見がない(レントゲンやMRIといった画像検査では異常がない)場合には、少々低額な別の算定表が適用され、6か月間通院の慰謝料は、89万円が基準とされます。
なお、この算定表は、日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「損害賠償額算定基準」(赤い本)に掲載されています。インターネットで検索すれば、何らかの形で見ることもできます。
次に、「後遺症慰謝料」については、原則として後遺障害の等級(1級から14級まで)ごとに定められた金額が適用されます(1級2800万円~14級110万円)。
以上は裁判での基準であり、示談交渉において、保険会社は、任意保険の基準を用いて、個々の事案の事情を考慮して算定しています。その金額は、裁判基準のおよそ6~7割といったところですが、裁判においては、弁護士費用を含む裁判費用のかかることや証明責任があることを考えると、示談でまとめた方がよいのか、裁判による解決を図った方がよいのかは、ケースバイケースで検討して見極めていくことが重要です。