行政の事例
※守秘義務の関係で、一部内容を変えて記載している場合があります。
※掲載した事例は、当時の法令や社会情勢に基づいた参考事例であって、
その後の法令改正や個別の事情により、結論が異なる場合があります。
6 | 公共事業の入札において違法な指名回避があったとする判決の確定により地方公共団体が建設業者に支払った損害賠償金を、国家賠償法に基づき当時の首長等に求償請求し、認められた事例 判例時報第2478号に掲載 |
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裁判の経緯
一審判決は指名回避の違法性は認めたものの、地方公共団体の職員が当時の首長等に忖度して指名業者推薦書を作成した可能性も否めないとして、地方公共団体が当時の首長等に対して提起した求償金請求を棄却しました。
控訴審(二審)は、原判決を変更し、当時の首長等に対する請求を認めました。上告審(三審)においても最高裁判所は控訴審の判断を維持し、判決が確定しました。
弁護士の対応
控訴審に当たり当事務所は、指名回避に当時の首長等が関わっていたことを立証するための事実調査に焦点を絞り、専属班を編成して全ての事件記録を精査し直しました。また、裁判官出身顧問の加入を得て、勝訴を得るための法律構成を練り上げました。
判決の意義
公権力を行使する公務員が職務を行うについて、故意または過失で他人に損害を与えたとき、国や地方公共団体は、国家賠償法に基づき当該公務員に代わって被害者に賠償する責任を負いますが、当該公務員が被害者に対する個人責任を負うことはなく、当該公務員に故意または重大な過失がある場合にのみ、国や地方公共団体が当該公務員に求償請求することができます。
ところが、当該公務員が懲戒免職になったりして賠償する資力に欠けることが多いなどの理由からか、実際には求償請求は殆ど行われていません。
しかしながら、国や地方公共団体が支出する賠償金の原資は税金であり、負担するのは国民(住民)です。地方公共団体の首長による職権濫用の違法行為に対する求償権行使の懈怠を追求する住民訴訟も増えてきましたが、本件は地方公共団体自らが国家賠償法に基づく求償権を行使して訴訟提起した結果、高裁および最高裁で請求が認められた稀少な事例です。
5 | 交際を断り殺害された女子大生の両親が、警察の捜査等に怠慢があるとして、県に対して求めた国家賠償のうち、慰謝料部分は認められたが、殺害に対する部分は因果関係がないとして斥けられた事例 判例時報第1819号および第1891号に掲載 |
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来所の経緯
警察の捜査に怠慢があったため殺害を防ぐことができなかったとして、被害者のご両親が国家賠償請求訴訟を提起したため、被告である行政の担当者が対応を相談に来所されました。
弁護士の対応
様々に飛び交う報道に左右されることなく、民事上の視点から刑事記録を精査し、事実を明らかにすることが必要である旨お伝えしました。
解決内容
延べ数千時間にも及ぶ打合せと調査を重ね、民事事件としての全容を明らかにしました。裁判所は、一審・控訴審ともに、捜査と殺害との因果関係を否定し、市民の警察に対する期待に十分応えることができなかったとして、慰謝料の支払いを命じました。
4 | 建築業者との交渉で日照権の補償を確保した事例 |
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来所の経緯
隣地に高層マンションが建設されると聞いた住民から、日照が阻害され、マンションから家屋内を覗かれるおそれや、風や雨水による被害のおそれがあるので、建設を阻止して欲しい旨の相談を受けました。他の法律事務所を訪れたところ、どこも引き受けてくれなかったとのことでした。
弁護士の対応
建設を阻止することは無理であることを伝え、低層階のマンションに設計変更させる、マンションの仕様を変更させて少しでも日照を得る、日照を得ることができないなら日照権等にかかる賠償金を得るとの方針や、目隠しの設置や風水害についての説明もして受任しました。
解決内容
まず、市役所へ出向き、建設確認申請が出されているかを調べ、建設業者と住民との話し合いが終わるまで建設確認を出さないよう要請し、建設業者との交渉を粘り強く行いました。建設業者は、一日も早く話し合いを切り上げようとしましたが、住民の本気の程度を示して、建設業者から建物の高さを低くするなどの譲歩を引き出しました。
3 | 国有地を時効取得した事例 |
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来所の経緯
依頼者は、遺産分割協議中、自宅敷地に国有地(河川)が含まれていることが分かりました。国に相談したところ、払い下げ手続を取るよう言われましたが、現況は普通の宅地の一部であり、これまでも自宅敷地として管理していたのに、今更、払い下げ手続きをして払い下げのためのお金を払わなければならないのは納得がいかないとして、当事務所に来所されました。
弁護士の対応
国有地の時効取得を検討することとし、これまでの国有地(河川)の状態、依頼者の管理の状況、近隣住民の認識等を踏まえ、公図上の国有地が現場のどの土地なのかを確定したうえ、法務局が時効取得を原因とする登記を了承するよう手続きを進める旨説明して、受任しました。
解決内容
近隣住民の協力を得て、国有地を確定し、従前の管理の状況を、証拠を摘示しながら明らかにしたうえ、訴訟により判決を得て登記しました。なお、判決の書き方如何では、法務局が登記することを了承しない場合があるので、事前に法務局に照会し、回答を得ていました。
2 | 違反現場を調査し、運転免許停止処分を回避した事例 |
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来所の経緯
依頼者は、自動車を運転して交差点を横断しようとしていたところ、一時停止義務違反であるとして、反則切符を切られました。一時停止の標識が見えなかったのであり、納得できないとして、当事務所に来所されました。
弁護士の対応
違反時から数ヶ月を経ていたため、違反現場の状況が違反時と異なっている可能性があり、依頼者から違反時の状況を詳しく聴取するとともに、現場に足を運びました。違反時の状況を再現するために、道路管理者への照会や近隣住民への協力依頼、違反時の写真が残されていないか等々の調査を要する旨方針を説明して、受任しました。
解決内容
上記調査の結果、違反当時、道路脇の樹木によって、一時停止標識が認識し難い状況にあったことを明らかにし、運転免許停止処分を回避しました。
1 | 無実を証明し、運転免許取消処分を回避した事例 |
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来所の経緯
依頼者が、マイクロバスを運転し片側二車線の高速道路を走行中、追い越し車線に進路変更したところ、後続して来た追い越し車線上の自動車が、左に急ハンドルを切り、走行車線上のトラックに突っ込み、自動車に乗車していた3名が亡くなりました。
依頼者の追い越し車線への進路変更が原因で事故が発生したとして、依頼者は、運転免許を取り消されることとなりましたが、追い越し車線に後続車がいないことを確認して進路変更したので納得できないとして、当事務所に来所されました。
弁護士の対応
行政処分に関係する書類を全て閲覧・謄写(コピー)し、現場に残されたタイヤ痕、追突されたとするトラックの形状、死亡するに至った車両の損壊状況、目撃者の目撃状況を詳細に検討することとし、その方針を伝えて、事件の依頼を受けました。
解決内容
上記検討に加え、工学鑑定により衝突時の衝突状態を物理科学的に推定し、コンピューターグラフィックを用いて、残されたタイヤ痕から現場を再現して、依頼者の引き起こした事故ではなく、走行車線上に停車していたとされるトラックが無理な車線変更(走行車線から追い越し車線へ)したことを明らかにし、運転免許停止処分を阻止しました。