建築紛争の事例
※守秘義務の関係で、一部内容を変えて記載している場合があります。
※掲載した事例は、当時の法令や社会情勢に基づいた参考事例であって、
その後の法令改正や個別の事情により、結論が異なる場合があります。
3 | 新築した建物の瑕疵等をめぐり、残工事代金の支払い義務がないとされた事例 |
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来所の経緯
依頼者は、自宅の新築工事を建築会社に発注していたところ、工期が大幅に遅れ、完成の目途が立たなくなってしまいました。仕方なく、未完成箇所を残したまま入居すると、浸水や漏水が発生したことから、建築会社に補修を依頼しましたが、建築会社は、完成して引き渡したから補修義務はないとして、残工事代金の請求書を送ってきました。そこで、依頼者は、残工事代金を支払わなければならないのかを相談するため、当事務所に来所されました。
弁護士の対応
残工事代金を支払わなければならないか否かを検討するには、先ず、浸水と漏水の原因および程度を確認する必要がありました。それには、建築のプロでなければ、浸水と漏水が、設計や工事の瑕疵によるものかどうかを正確に判断することができないことから、当事務所が提携している一級建築士と共同で進めていくことを説明しました。
解決内容
一級建築士とともに現地調査を行ったところ、浸水の原因は設計の誤りにあり、漏水の原因は外壁工事の防水対策不良によるものと判明しました。同時に、その他の瑕疵も複数発見され、残工事代金の支払には応じるべきでないと判断しました。
残工事代金を支払う意思はない旨通知したところ、建築会社は訴訟を提起しましたが、当方が工事の瑕疵の修補費用(損害賠償請求権)は残工事代金額を上回ることを主張・立証したところ、裁判所は建築会社の請求を棄却する判決を言い渡しました。
2 | 車両衝突の影響が建物全体には及んでいないことを、一級建築士と協同して立証した事例 |
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来所の経緯
交通事故により、依頼者が運転する自動車が、道路沿いの商店に突入し、建物の一部が損壊してしまいました。依頼者は、謝罪するとともに損壊した箇所の補修費を支払いましたが、商店主から、追加の賠償を請求されたため、当事務所に来所されました。
弁護士の対応
追加の請求内容を確認したところ、衝突の影響が建物全体に及んでいることを前提にしていることが判明しました。そこで、商店主の請求が妥当であるか否かを判断するためには、事実関係や証拠関係を精査し、建築専門家による修繕の要否と程度の判断が必要であり、当事務所には、提携している一級建築士がいるので、協同で作業を進めることができる旨説明し、検証作業を開始しました。
解決内容
一級建築士によると、衝突の影響は建物全体に及んでいないとのことであり、その旨、商店主に告げると、商店主は訴訟を提起しました。当方は、一級建築士の鑑定書を提出し、商店主の請求は過大である旨主張・立証したところ、裁判所は、建物全体の補修費を認めず、営業損害の一部を認める内容の和解が成立しました。
1 | 建築業者との交渉で日照権の補償を確保した事例 |
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来所の経緯
隣地に高層マンションが建設されると聞いた住民から、日照が阻害され、マンションから家屋内を覗かれるおそれや、風や雨水による被害のおそれがあるので、建設を阻止して欲しい旨の相談を受けました。他の法律事務所を訪れたところ、どこも引き受けてくれなかったとのことでした。
弁護士の対応
建設を阻止することは無理であることを伝え、低層階のマンションに設計変更させる、マンションの仕様を変更させて少しでも日照を得る、日照を得ることができないなら日照権等にかかる賠償金を得るとの方針や、目隠しの設置や風水害についての説明もして受任しました。
解決内容
まず、市役所へ出向き、建設確認申請が出されているかを調べ、建設業者と住民との話し合いが終わるまで建設確認を出さないよう要請し、建設業者との交渉を粘り強く行いました。建設業者は、一日も早く話し合いを切り上げようとしましたが、住民の本気の程度を示して、建設業者から建物の高さを低くするなどの譲歩を引き出しました。